ここはcafe Square
コーヒーの味は良くわからないが、雰囲気が良く、最近よく足を運ぶお店のひとつだ。
今日はいつもより少し騒がしいが、土曜日だということを考えれば、静かで居心地も悪くない。
第一問 学田と学生
「聞いてます?」
少し離れた席で、勉強をしている学生の様子を伺いながら、冷たくなった元ホットコーヒーを一気に飲み干したところで、静かな店内に大きな声が響いた。
「ねぇ!聞いてますか!?」
驚きと同時に我に返ると、机を挟んだ向かいに座っている、眉毛を釣り上げた男と目が合った。
「僕、いま、真面目な相談をしていたんですけど!」
彼は、職場の後輩の「学田」
こうしてプライベートでも一緒にカフェへ来るほどの仲で、仕事もそこそこできる男だ。
しかし、少し真面目過ぎて、一緒にいて疲れることもある。
「もちろん聞いていたよ、学田は少し真面目過ぎるんじゃないかな。」
本当は途中から話を聞いていなかったが、真実を口にする必要はない。
彼はアドバイスを求めているわけでなく、愚痴を聞いてほしいだけなのだから。
「えぇぇ、やっぱりそうなんですかねぇ」
いつもならここで「そんなことないです!」と突っかかってくるのだが、どうやら今日は本格的に落ち込んでいるらしい。
こうなってしまうと、この後ずっと愚痴に付き合わされてしまう。何とかして話を別の方向に持っていくしかない。
「少し肩の力を抜いてみたらどうかな?考えてもダメな時は別のことを考えて、一度リセットした方が良いこともあるんだよ」
「それはわかってるんですけどね……」と、全然わかっていない顔で呟く学田。
これはなかなか重症のようだ。仕方ない、いつもの手でいくか。
「学田、後ろに学生さんがいるだろ」
「はい、それがどうかしたんですか?」
「あの学生さんは、何の科目を勉強していると思う?」
「そんなのわかるわけないじゃないですか」
「そうだな、じゃあ選択肢は5つ。国語、数学、理科、社会、英語、この五科目のどれだと思う」
「うーん、ここからじゃよく見えないなぁ、なんだろう」
「五科目の中で、ひとつだけ学んでいるんだ。」
「ひとつだけ、学んでいる……」
学生はどの科目を勉強しているのでしょうか?
答えは、「国語」「数学」「理科」「社会」「英語」のうちのどれかひとつです。
第二問 あえてのスクエア
「これくらいは、楽勝ですね。」
クイズ好きのこの男は、どんな時でも問題を出されると、嬉々として解きたがる。
そして、まんまとこちらの思惑通り、さっきまで暗い顔をしていた学田は、「次はなに?」という期待の表情を浮かべていた。
「じゃぁ次は、あの学生さんが好きな科目を当ててごらん?」
「好きな科目?何だろう難しい。」
「あの学生さんが着ている制服は、ここから少し離れたマルバツ高校の制服だよね。」
「あぁ、言われてみればそうですね。」
「マルバツ高校の近くには、トライアングルやペンタゴンってカフェがあるんだけど、彼はわざわざこのお店を選んでいるみたいだね。」
「なるほど、ここのカフェは、ス、ス、スクアレ?」
真面目なくせに、この男は英語が大の苦手だ。
「スクエアね、四角って意味さ。」
「きっとあの学生さんはスクエアが大好きなんだよ。」
学生が好きな科目はなんでしょう?
答えは、「国語」「数学」「理科」「社会」「英語」のうちのどれかひとつです。
第三問 苦手を克服?
「どうですか?正解ですか?」
下唇を少し噛みながら、鼻息荒く問うてくる学田。
「凄いなぁ、さすが学田だ」
とても嬉しそうなので、ここは持ち上げておく。
「しかし学田、君は少し英語の勉強もした方がいいかもしれないね」
そして、すぐに落とすのが、私のやり方だ。
学田は聞こえないふりをして、コーヒーのおかわりを注文した。
「じゃぁ、最後はこんな問題にしよう」
カバンの中から付箋とボールペンを取り出し、文字を書き込んで学田に渡す。
「この3つの文にはある共通点があるんだ、わかるかい?」
「僕が英語苦手なのわかってて、こんな問題出してるんでしょ」
学田は少しムッとしながらも、「いま…いぬ…神の犬、おおかみ?」などとつぶやき始めた。
「大丈夫、この問題は学田でも解けるから」
カバンから英字新聞を取り出し、これ見よがしに広げて読みながら、私はコーヒーのおかわりを注文した。
第三問 付箋の文字の共通点は何?
「Won’t it now?」「God’s dog.」「Not a banana baton.」これらの共通点を見いだそう。