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逃走劇の真実|いじわる・ひっかけ問題

1台の白いバンが街中を走行している。

片側3車線の広い道路を、蛇行しながら走行しており、明らかに他の車よりもスピードが出ているようだ。

 

目の前の交差点で、信号が青から黄色に変わり、間もなく赤になろうとした時、荒い運転をしていたそのバンはクラクションを鳴らした。
バンの前を走っていた軽自動車の運転手は、クラクションに驚き反射的にルームミラーを見る。
運転手は逡巡の後、覚悟を決めたようにアクセルを強く踏んで、全赤の交差点を走りぬけた。そのまま停車してしまうと、バンに追突されかねないと判断したようだ。

その判断は正しかったようで、バンは軽自動車をすれすれのところで追い越し、軽自動車と並走する形で強引に交差点を突破していった。

その姿を見ていた白バイの警官が、迷いなく赤色灯を回しバンを追いかける。

 

白バイはバンを追走しながら、車を止めるように何度も警告したが、バンを運転している運転手はどうもその警告に従う様子はないようだ。

 

白バイの追走が始まってから15分ほど経った頃、バンは今、白バイだけでなく、パトカー2台を含めた3台の警察車両に追走されていた。
バンはそれでも止まる様子を見せず、何度も赤信号の交差点を無理やり抜けて、ついには大通りから脇道へと走路を変えた。

車一台分ほどの幅しかない一方通行の道を、バンはとんでもないスピードで走り抜ける。
白バイとパトカーも必死に追いかけてはいるが、その距離はあまり縮まっていないようだ。

追走している警察官も追われているバンの運転手も、いつまで続くのかわからない追いかけっこに精神をすり減らし、もはやこれは永遠に終わることはないのではないかと錯覚し始める。
しかし、このような逃走劇は、永遠に続く事はなく、現実でもフィクションでも大抵唐突に終わりが訪れものなのだ。

 

それは、あっという間の出来事だった。

走行する道の先で、老人がゆっくりと道を横断している様子をバンの運転手が捉えた。
今まで一言も発することがなかったバンの運転手は、慌てた様子で「お、親父!?」と叫んでいる。
それと同時に白いバンはキュルキュルと鳴きながら速度を落とし始め、やがてその老人の前で白い煙を吐き出しながら停車した。

その場に縫い付けられたように動かなくなった老人は「と、止まれ、止まれ!!と、とま」と言ったきり、白目を向いて倒れてしまう。
バンが接触したわけではないが、どうやらあまりのことに気絶してしまったようだ。

 

「停まりなさい!」とマイクを通して叫んでいた警察官は、突然前方のバンがブレーキを踏んだことに驚き、混乱しながら「おいおいおいおいおい!急に停まるな!」とわけのわからないことを叫ぶ。
危うく追突するところだったが、なんとか停車し、転げるように白バイから飛び降り、煙をあげているバンへと駆け寄った。

 

バンの運転手と老人は揃って気絶しているものの、命に別状はないように見えた。
警察官は胸をなでおろし、一瞬緩んだ表情を引き締めて救急の手配を始める。

 

どうやら今回も例にもれずこの逃走劇に終わりの時が訪れたようだ。
例外だったのは、死を引き連れて訪れがちなその時が、今回ばかりは何も引き連れて来なかったということくらいだろう。
不幸中の幸いというべきか、今回の逃走劇で被害にあったのは、無理な制動で動かなくなった白いバンだけだったという。

 

 ここで問題です。

何度も停止を促した警察官を無視して逃走していた白いバン。

その白いバンを最終的に止めたのは誰?

参考データ
ひらめき
(2.0)
観察力
(3.0)
知識
(2.0)
難易度
(2.0)
答え
正解は、「バンの運転手」

白いバンは、老人が止めたわけでも、警察官が止めたわけでもなく、バンの運転手がブレーキを踏んだために止まったのです。